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近年,発達障害をはじめとするこころの発達の問題についての関心が高まっているが,それらの原型は,症例(または症例シリーズ)の卓越した記述に基づくことが多い。そこで,そのような症例報告を含めて,こころの発達の問題に関する“古典”ともいうべき論文または書籍を取り上げて,その概要を紹介しつつ,現在からふりかえって考察を加えて,今後の展望を論じるという特集を企画した。
その際に,自閉スペクトラム症については,最もオーソドックスなものとして,Leo Kannerによる「情緒的交流の自閉的障害」およびHans Aspergerによる「自閉的精神病質」を取り上げていただくようにお願いしたが,それ以外については各筆者に“古典”と思われる文献を選択いただくことにした。自身の担当したトゥレット症候群についてはGilles de la Touretteの論文に尽きると考えていたこともあり,他についても極め付きの1編に絞られるかと思っていたが,必ずしもそうではない。疾患によって,筆者によって,“古典”の選択の仕方やその料理の仕方が異なるのを味わっていただける特集になっている。その中でも,「御伽草子」の「物くさ太郎」から始まるADHD,昭和15年刊行の「児童心理学」というわが国の書籍も取り上げている限局性学習症に関する記述は,それらが認識されるようになった歴史を浮かび上がらせて興味深い。それ以上に,Rene Spitzによる「依存抑うつ」,Leon Salzmanによる「強迫パーソナリティ」,John Bowlbyによる「愛着と喪失」3部作が引き続いて取り上げられているのは壮観と言えよう。また,“古典”と現在の診断基準を比較して,強迫と不安との関係,さらには,摂食障害と過活動や過剰適応的振る舞いとの関係にあらためて焦点が当てられている。
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