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はじめに
高次脳機能障害とは,外傷性脳損傷や脳血管障害などによる脳の損傷が原因で,後遺症として生ずる記憶障害,注意障害,失語症,遂行機能障害,社会的行動障害などの症状により日常生活や社会生活に制約を来す状態のことをいう。外見上分かりにくいことや一般的に認知されていないという特徴もあり,周囲からの理解やサポートを受けられず,孤立してしまうことも多い。そのため,周囲の関係者が適切な知識を共有して当事者・家族を支えていく必要がある。
この高次脳機能障害という用語が使用されるようになったのは,ここ15〜20年である。それ以前は用語自体存在していなかったため,公的なサポートを受けることが難しく,どの制度にも適切に位置付けられてこなかった。1990年代後半に,当事者や家族が医療・福祉サービスを受けたいと訴え始め,高次脳機能障害という用語が用いられるようになった。2001年より厚生労働省は,「高次脳機能障害支援モデル事業」を5年間実施した。そして,「高次脳機能障害診断基準」「高次脳機能障害標準的訓練プログラム」「高次脳機能障害標準的社会復帰・生活・介護支援プログラム」3)を取りまとめた。これらにより,高次脳機能障害は,器質性精神障害に位置付けられ,社会復帰のために必要な福祉サービスを受けられるようになった。2006年度からは,障害者自立支援法(現:障害者総合支援法)に基づく地域生活支援事業の一つとして高次脳機能障害支援普及事業へと引き継がれ,支援拠点機関は,2011年6月に47都道府県すべてに設置された。
東京都においては,2006年11月から,東京都心身障害者福祉センターを支援拠点機関としている。そして,東京都内12圏域に拠点病院の設置と,区市町村高次脳機能障害者支援促進事業の実施を行い,区市町村ごとの支援員の配置や関係機関のネットワークづくりを推進している12)。また,子どもから成人までそれぞれのライフステージに合わせた当事者会や家族会も広がりつつある。
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