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はじめに
精神障害者の社会生活を安寧に維持するために,医療と併せて福祉の介入は欠かせない。精神障害者にかかわる領域でこのような認識が一般化されてきた大きな要因の一つは,精神衛生法が精神保健法及び精神保健福祉法へと改正施行される中で,国が障害者プランなどによって,精神障害者を地域で支えるシステムづくりの推進を図ろうとしていることによる。
こうした状況は,医療と福祉を両輪とした支援の具体的展望,あるいは関連領域のさまざまな専門職やインフォーマルな社会資源を取り込んだ,包括的精神障害者支援の展開が求められているといえよう。とはいえ福祉実践における介入が,関連職種の方々にはどのような理論に基づいてなされるのか理解し難いか,あるいは福祉領域における特定の介入方法をもって福祉の介入と考えられがちである。例えば昨今よく使われる心理・社会的視点やケアマネジメントは,福祉実践における介入の一手法であり,福祉実践のすべてではない。また,福祉専門職の側もさまざまな支援のありようを支持するあまり,他の専門職からすると専門性が見えにくく,福祉実践の基盤と方法を伝えきれていないといってよい。
では福祉実践の眼目とは何かといえば,それは社会福祉の価値として表現する事柄であり,多分に理念的・哲学的である。それでもなお福祉実践の第一義的要素を価値に置くのは,個の尊厳や人権に配慮し,利用者主体の考え方を堅持しながら介入していくうえで,ことのほか重要な介入意識(倫理観を含むないし形成する要素)となるからである。
そこで小論では,最初に福祉における介入,すなわち福祉実践の考え方を整理し,そのうえで福祉実践における危機介入の考え方と,福祉の介入の意義などについて論じる。なお,事例を一つにとどめ,福祉施設体系の中での危機介入を十分論じることができなかった。それは小論の課題を福祉の介入方法に求めることで,関連領域の方々にその理解を求めようとしたことによる。
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