Japanese
English
特集 せん妄をめぐる最近の動向
せん妄の病態と治療
Pathophysiology and Treatment of Delirium
和田 健
1
Ken Wada
1
1広島市立病院機構広島市立広島市民病院精神科
1Department of Psychiatry, Hiroshima Citizens Hospital, Hiroshima City Hospital Organization, Hiroshima, Japan
キーワード:
Delirium
,
Pathophysiology
,
Treatment
,
Neural network
,
Neuroinflammation
Keyword:
Delirium
,
Pathophysiology
,
Treatment
,
Neural network
,
Neuroinflammation
pp.223-232
発行日 2018年3月15日
Published Date 2018/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205552
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はじめに
せん妄は軽度の意識混濁に種々の程度の意識変容を伴う意識障害の一型である。それに加えて認知機能障害や注意障害,睡眠覚醒リズムの障害,幻覚妄想,精神運動興奮,情動不安定などの精神症状を呈する。せん妄の病態においては,これら諸症状の出現に関与する神経ネットワークが機能不全を来していると考えられる。具体的には意識の維持に関与するとされている脳幹網様体賦活系や,認知機能や情動コントロールに関与する大脳辺縁系を含む大脳皮質の機能不全が想定されている。これら神経ネットワークの機能不全は,老化に伴う神経細胞の脆弱性を基盤に,神経炎症,酸化的ストレス,神経内分泌異常などにより惹起された神経伝達物質の異常に基づくと考えられる(図1)8,17)。
Lipowski16)が提唱したせん妄の3型,過活動型,低活動型,混合型は相互に移行することもあり,一連の病態と理解されているが,特に前2者では異なった臨床症状を呈する。したがってその病態においては共通する機序の上に異なる機序が重畳していると考えられる。脳幹網様体賦活系の機能低下による意識障害が共通の機序となり,過活動型せん妄では大脳辺縁系などの機能亢進が,低活動型せん妄ではより広範な大脳機能の低下が想定される。
せん妄への治療は,直接因子への治療が本質的であり,平行して誘発因子への非薬物療法的介入と症状コントロールのための薬物療法を組み合わせて行う。本稿では,せん妄の病態について概観した後,せん妄の治療について簡潔に述べたい。
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