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高齢者の増加やコンサルテーション・リエゾン分野の拡大により精神科医の活躍の場が広がるなか,せん妄は古くて新しい重要なテーマである。せん妄の理解は,科学としての精神医学の視点にとどまらない。適切な対処がなされなければ医療現場への負の影響は大きく,生物学的視点からは身体疾患の円滑な治療の妨げとなり,医療事故など安全管理のリスクにもなる。心理面に着目すれば,患者本人のみならず家族の苦痛にも大きく関与し,医療従事者自身の疲弊にも直結する。社会的側面としては,入院の長期化に関与し,医療経済への影響も大きい。
本特集では「せん妄をめぐる最近の動向」をいくつかのキーワードから多面的に捉え,臨床実践の場で役立つ内容の原稿をまとめていただいた。「病態生理と治療」については和田健先生が,最新の知見を含めた生物学的機序を中心に,分かりやすい総論にまとめてくださっている。「予防」については松本晃明先生が,高齢者入院患者の不眠対応に着目した実践を中心に,予防のポイントを詳しく解説されている。「アルコール離脱せん妄」については木村充先生が,一般的なせん妄とは異なるアルコール離脱特有の対処法を詳しく解説されている。「高齢者」との関連では宮永和夫先生が,老年精神医学の視点から事例を提示し,その評価や意識障害そのものの持つ意味について論じられている。「がん患者」との関連では間島竹彦先生が,緩和ケアや精神腫瘍学の視点から,本人・家族・医療者へのケア的応対も含めて論じられている。「鑑別」については吉村匡史先生が,非けいれん性てんかん重積や睡眠随伴症,うつ病性昏迷,解離性障害などを取り上げ,具体的な鑑別ポイントを詳しく解説されている。「社会的問題」については吉岡充先生が,法律や倫理面などの歴史的変遷にも触れながら,臨床現場におけるあるべき姿や姿勢について論考を述べられている。いずれもそれぞれの分野にご造詣の深い,臨床経験豊富な先生方からのご寄稿である。
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