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シンポジウム 気分障害の生物学的研究の最新動向─DSM,ICD改訂に向けて
うつ病の精神薬理・生化学的研究を概観する
Overview of Psychopharmacology and Neurochemistry of Depression
神庭 重信
1
Shigenobu KANBA
1
1九州大学大学院医学研究院精神病態医学
1Department of Neuropsychiatry, Graduate School of Medical Sciences, Kyushu University, Fukuoka, Japan
キーワード:
Depression
,
BDNF
,
Neurogenesis
,
Neuroinflammation
,
Antidepressant
Keyword:
Depression
,
BDNF
,
Neurogenesis
,
Neuroinflammation
,
Antidepressant
pp.357-362
発行日 2011年4月15日
Published Date 2011/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101844
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はじめに
うつ病が単一遺伝子疾患ならば,まず遺伝子の同定作業を行い,その遺伝子を操作したモデル動物を作製し,モデルの妥当性を検証する,という常套手段で研究を進めることができる。しかしうつ病は多因子多遺伝子疾患なので,この手段が容易には通用しない。したがって,うつ病の生物学的研究は,抗うつ薬やうつ状態を生む薬物の薬理学的研究に依拠するところが多くなる。ところが薬理作用といっても無数にある。ECT(electoroconvulsive therapy)の効果もまたしかりである。その中で注目されてきた対象は,モノアミン系の構成要素や,その時々に他の研究領域で注目された物質であることが多かった。たとえば,伝達物質,受容体,G蛋白,cyclic AMPであり,最近ではプロテインキナーゼ,転写調節因子,そして神経栄養因子などである。
うつ病研究のもう1つのロジスティックは,動物にストレスを与えうつ病と類似した状態を作り出し,この時の脳内変化を調べる,という方法である。抗うつ薬やECTにより,モデル動物の脳変化が修復される場合には,与えたストレスによりうつ病の脳病態を再現できている可能性があると考える。
以下に,一部のうつ病では,微細な神経傷害が起きているのではないか,そして抗うつ薬はこの傷害を修復することで,情動の神経回路が再び正常に働くように作用しているのではないか,とする神経傷害仮説を中心に,最近注目されているうつ病の精神薬理・生化学的研究の概略を紹介したい。
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