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精神医学におけるアディクションの歴史は決して新しいものではありません。しかし,それが人々に与える意味,社会へのインパクト,治療的な考え方は時代とともに大きく変遷しています。本号では,「多様なアディクションとその対応」というテーマで,現代のアディクションの諸相を,各分野の第一人者に論じていただいております。すなわち,はじめに,本特集の趣旨と,DSM-5とICD-11草稿のアディクション概念を樋口進先生が論じられ,アルコール依存の対象拡大と新たな治療法については武藤岳夫先生が,減酒外来の実践については湯本洋介先生が,薬物依存,ニコチン依存,ギャンブル障害,インターネットゲーム障害,性的アディクションの現状と新たな治療法については成瀬暢也先生,宮田久嗣先生,松下幸生先生,片上素久先生,原田隆之先生が,嗜癖という視点からみた窃盗症の今日的な理解については村山昌暢先生が論述されています。いずれも,アディクションの多様性と今日的な意味をあらためて考えさせられる厚みのある論文です。
一方,短報では,加藤秀明先生が,抗てんかん薬の投与によって3か月に及ぶエピソード記憶の障害が劇的に改善した症例を報告し,てんかん放電および発作頻発による側頭葉の機能低下が持続的な記憶障害に関連する可能性があること,高齢者では認知症との鑑別に注意を要することを喚起しています。また,土井勉先生が,深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症を併発した緊張病患者においても,電気けいれん療法が有効かつ安全に施行し得ることを報告し,血栓症がある患者におけるECTの安全な施行方法について解説されています。さらに,私のカルテでは,田中恒孝先生が,うつ病相に一致して口腔内体感症を認めた一例を紹介し,循環性うつ病の生気悲哀という観点から体感症を理解し得る場合があることを考察しています。これらは,いずれも,我々の日々の日常診療に重要な示唆を与える貴重な論文であり,臨床家には是非一読をお勧めいたします。
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