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編集後記
S. A.
pp.102
発行日 2017年1月15日
Published Date 2017/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205313
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「精神医学」は,研修医の頃から長年にわたって読み親しんできた医学雑誌であり,2017年の新年の第1号の編集後記を記すことができるのは,私にとってはたいへん光栄なことです。
本号の巻頭言で,岩手医科大学の大塚耕太郎先生が,テレビでしばしば放映される医療ドラマの構図を説明した上で,「精神医療にあてはめて考えれば,症状を緩和するだけでなく,患者の主体性を大切にする,取り戻す,ということが中心的命題である」と記しています。また,大牟羅良氏の著書『ものいわぬ農民』を引用して,「(著者は,貧困にあえぐ寡黙な農民たちが)いろり端では自分の話を語りはじめることを知り,いつかはものが言える日が来ることを願っていた。こころの声を大切にし,それぞれの物語を聞くことは,主体としての主人公の尊厳を守ることであろう」と述べています。私は,この言葉の中に,精神科医の日々の仕事の本質があるように思われ,深く感銘を受けました。
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