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編集後記
S. A.
pp.556
発行日 2016年6月15日
Published Date 2016/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205189
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精神科医となって31年の歳月が流れ,本年から「精神医学」の編集委員を務めさせていただくことになりました。研修医になったばかりの頃,上級の医師から繰り返し教えられたことは,論文を読むことでもなく,研究をすることでもなく,ひたすら患者とともに過ごすことでした。それは,今にして思えば,自分に「できること」は何かを考える貴重な時間であったように思われます。福田正人先生が巻頭言に書かれているとおり,それは初心者の頃には誰もが抱く気持ちであり,いつまでも大切にすべき思いでしょう。
さて,本号には,2つの研究と報告が掲載されています。1つは国際的にも使用されている統合失調症の陰性症状評価尺度(NSA-16)の日本語版作成に関する研究です。附録として,評価のための半構造的面接(質問の仕方)とアンカー(評価の基準)が示されており,今後の臨床研究の中で活用できるようにされています。もう1つは,東日本大震災関連の自殺企図の特徴を分析した研究です。発災後1年間に精神科救急を受診した自殺企図例の調査であり,災害が人々のメンタルヘルスに及ぼす影響の大きさと災害への備えを考えるための貴重な報告です。短報では,ブロナンセリンが有効であった遅発性ジスキネジアの1例,統合失調症患者に対する骨格筋電気刺激が糖代謝異常の改善に寄与する可能性を示した介入研究,食行動異常の定義・評価の重要性を示した調査研究,身体症状症と見なされていたレビー小体型認知症の1例,ラメルテオンが有効であった特発性レム睡眠行動障害の1例が報告されています。いずれも,日々の臨床に新たな示唆を与える貴重な報告です。
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