Japanese
English
特集 Research Domain Criteria(RDoC)プロジェクトの目指す新たな精神医学診断・評価システム
末梢血バイオマーカーを用いた精神医学評価システムの構築—現代のうつ病診断・評価における困難の打開に向けて
Development of Psychiatric Evaluation System Using Blood Biomarkers to Resolve the Current Difficult Situation in Diagnosis and Assessment of Depression
加藤 隆弘
1,2
Takahiro A. Kato
1,2
1九州大学病院精神科神経科
2九州大学大学院医学研究院精神病態医学
1Department of Psychiatry, Kyushu University Hospital, Fukuoka, Japan
2Department of Neuropsychiatry, Graduate School of Medical Sciences, Kyushu University
pp.51-62
発行日 2018年1月15日
Published Date 2018/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205523
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
アメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)の所長であったTomas Inselが提唱したResearch Domain Criteria(RDoC)プロジェクトは,「精神疾患をカテゴリカルに分類する」というDSM-Ⅲで決定的となり最新のDSM-5に至るまで長年にわたり支配的であった操作的診断システムに一石を投じた画期的な試みである。RDoCでは,統合失調症,双極性障害,うつ病といった従来のカテゴリカルな診断をいったんブラックボックスとして棚上げし,さまざまな精神症状を遺伝子,分子,細胞,神経回路といった生物学知見に基づいてディメンジョンレベルで評価することでそのレイヤー間の相互関係をも明らかにし,こうしたアプローチで明らかになる生物学的根拠に基づき精神疾患を評価できるシステムを作るプロジェクトであると,少なくとも筆者は理解している。
本稿では,現在の「抑うつ」に関連する精神医学的診断・評価の問題点を打開するために筆者らが立ち上げた大学病院気分障害外来での,末梢血バイオマーカーを用いた精神医学診断・評価システム構想を紹介し,RDoCプロジェクトの観点から,その意義を考察する。
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.