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特集 Research Domain Criteria(RDoC)プロジェクトの目指す新たな精神医学診断・評価システム
ゲノム変異を用いた精神医学診断・評価システムの構築
Reconstruction of the Psychiatric Diagnosis and Evaluation Based on the Genetics
木村 大樹
1
,
尾崎 紀夫
1
Hiroki Kimura
1
,
Norio Ozaki
1
1名古屋大学大学院医学系研究科精神医学分野
1Department of psychiatry, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan
キーワード:
Research domain criteria
,
Next generation sequencing
,
Clinical sequencing
,
Disease model
,
Precision medicine
Keyword:
Research domain criteria
,
Next generation sequencing
,
Clinical sequencing
,
Disease model
,
Precision medicine
pp.43-50
発行日 2018年1月15日
Published Date 2018/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205522
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RDoCにおけるゲノム研究の位置付け
近年の精神医学研究によれば,症状,その背景にある神経回路病態,病因ゲノム変異のいずれもが,ひとつの精神障害のみならず精神障害横断的に関与していることが明らかになっている。しかし,アメリカ精神医学会(APA)が2013年に発表したDSM-5は,連続的なディメンジョナル評価をほとんど採用せず,依然として症候学に依拠したカテゴリカルな分類を継続している1)。このカテゴリカルな診断基準内には,遺伝学的にも症候学的にも不均一な疾患群が含まれていると同時に,同一の病因・病態を有する一群は多様な診断基準に散在していると考えられる。その結果,病因・病態に基づく治療薬開発は不可能となり,近年多くの製薬会社が,有病率が高く社会的損失が非常に大きい精神障害を対象とした創薬からの撤退を宣言している理由の1つとなっている10)。
このような状況下,アメリカ国立精神衛生研究所(National Institute of Mental Health:NIMH)は2010年にResearch Domain Criteria(RDoC)プロジェクトを立ち上げた。RDoCでは,診断横断的に機能ドメイン(いわゆる症候:負の感情価,正の感情価,認知機能,社会情報処理,覚醒・制御系)を評価するとともに,各ドメインに関連する遺伝子,分子,細胞,神経回路など,一連の階層で検証した結果を統合することで,病因・病態に即した症状評価に基づく診断法やバイオマーカーの開発を目指している(図1)。
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