特集 精神疾患の生物学的診断指標—現状と開発研究の展望
特集にあたって
鈴木 道雄
1
Michio SUZUKI
1
1富山大学大学院医学薬学研究部神経精神医学講座
1Department of Neuropsychiatry, University of Toyama Graduate School of Medicine and Pharmaceutical Sciences, Toyama, Japan
pp.799
発行日 2017年9月15日
Published Date 2017/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205444
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精神医学以外の分野では,多くの疾患の病態生理や病因が究明され,観察に基づく診断から病因・病態に基づく診断への転換が起こった。いまだに臨床的観察に基づくパターン認識による診断の段階に留まっている精神医学の領域でも,同様の転換を促すには,診断や治療に有用な生物学的指標(いわゆるバイオマーカー)が欠かせず,これまで,そのような生物学的診断指標の開発のために多くの努力がなされてきた。いまだ十分に達成されてはいないものの,近年は着実な進歩が認められ,注目すべき研究成果も少なくない。本特集は,精神疾患の生物学的診断指標の臨床応用の現状,開発研究の成果,今後の課題などについて,理解しやすい形で展望することを意図している。
本特集で取り上げられている生物学的診断指標は,光トポグラフィー検査(近赤外線スペクトロスコピー,near-infrared spectroscopy;NIRS)以外はいわば研究段階のものである。平成26(2014)年に,それまで先進医療として知見を積み重ねてきた光トポグラフィー検査が,うつ症状の鑑別診断補助のために保険診療として認められたことは,精神医療の歴史における画期的なできごとであった。その後3年が経過し,光トポグラフィー検査の使用経験が蓄積されるとともに,さまざまな議論がなされている。抑うつ状態の診断における光トポグラフィー検査の意義について,あらためて確認・検討することは重要と思われる。
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