- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
統合失調症の治療目標は,過去の約100年において,治療法の進歩などに伴って変遷してきた。ショック療法の時代は鎮静を得ることが主な目標であったが,抗精神病薬の登場により陽性症状の寛解を目指すことが可能になり,非定型抗精神病薬が導入されると,心理社会的アプローチを基盤に陰性症状の改善も治療目標のひとつとして意識されるようになった。また,統合失調症における認知機能障害の存在とその機能的転帰における重要性が明らかとなり,認知機能障害を改善するための取り組みが行われるようになった。さらに,早期診断・早期介入支援が予後を大きく改善する可能性が注目され,発症予防を視野に入れた研究も行われるようになった。現代の統合失調症の治療においては,薬物療法とさまざまな心理社会的アプローチとの併用により,臨床症状の改善だけでなく,独立した生活や社会的交流を可能とする機能的リカバリーの達成に向けた努力が行われている。また,リカバリーの多様な意義が認識され,当事者がみずから求める生き方を主体的に追求する主観的リカバリーを支援することも強く求められている。
本特集では,第一に,統合失調症のさまざまな治療技法や支援方法の実践におけるそれぞれの視点から,統合失調症の治療ゴールはどのように考えられるか,そこへ到達するには何が必要か,それを阻む要因は何か,臨床現場では何に注意して取り組むべきか,今後どのような研究が必要か,などを明らかにしたいと考えた。そのために,薬物療法,心理社会的治療,認知機能障害,地域生活支援,身体的健康,早期介入・早期支援という,治療ゴールについて考えるときに特に重要と考えられる視点から,それぞれの最新知見をふまえて展望を示していただいた。
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.