特集 統合失調症の心理社会的治療—どのように使い分け,効果を最大化するか
特集にあたって
鈴木 道雄
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1富山大学学術研究部医学系神経精神医学講座
pp.1425
発行日 2021年10月15日
Published Date 2021/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206458
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米国国立精神衛生研究所の所長であったThomas Inselは,2010年のNature誌において,統合失調症研究が始まって一世紀,薬物療法が用いられてほぼ半世紀が過ぎたが,統合失調症の転帰に顕著な改善はないと述べた1)。実際に,1921年から2011年に公表された37の研究において,統合失調症のリカバリー達成率の中央値は13.5%であり,時代とともに向上してはいない2)。統合失調症の治療では,薬物療法と心理社会的治療が2本の柱とされ,両者を統合的に行うことによってリカバリーの達成に近づくことができる,という認識は広く共有されている。とは言え,薬物療法の効果の限界が認識されながらも,わが国の精神科治療は依然として薬物療法が主体となっている。さまざまな心理社会的治療が開発され,一部では明確なエビデンスも示されつつあるが,それらを必要とする患者に十分に提供できているとは言いがたい。それぞれの医療機関あるいは地域において利用可能な心理社会的治療には制約があるため,薬物療法を行いながら,利用可能なリソースに応じて使い分けている場合が多いであろう。また,患者の個別性に十分に配慮するまで至らずに,心理社会的治療を適用している場合も少なくないのではないか。
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