特集 時代とともに変わる精神疾患—その変化の本質を理解する
特集にあたって
鈴木 道雄
1
1富山大学
pp.835-836
発行日 2025年6月15日
Published Date 2025/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.048812810670060835
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疾患は時代とともに変化する。身体疾患においては,過去に疾患の中心を占めていた感染症は,抗菌薬やワクチンの開発などによってその多くが克服された一方で,グローバル化の進展や地球温暖化が新興感染症のパンデミックをもたらしている。また,高齢化や生活習慣の変化は,悪性腫瘍やメタボリックシンドローム/生活習慣病の増加を招いた。時代とともに変化することは精神疾患も同様であるが,その変化の本質や背景要因は,身体疾患に比較すると明確でないことが多いように思われる。
教育や医療などの現場における神経発達症の増加は,現代の精神疾患における動向の特に大きな特徴の一つである。時代,国,文化を問わず一定の割合で生じると信じられていた統合失調症が減っており,軽症化していると多くの臨床家が実感している。うつ病患者の顕著な増加とともに顕在化した,メランコリー親和型うつ病とは異なる非定型病像を示すうつ病は,うつ病の診断や治療の見直しを迫るものであった。双極症についても,Ⅱ型の概念が導入されたことにより,裾野が大きく広がり,診断と治療に変化がもたらされている。ボーダーラインパーソナリティ症などのパーソナリティ症の減少や軽症化を指摘する声も少なくない。摂食症は,かねてより時代や国によって有病率が異なる疾患として知られている。

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