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特集 国連障害者権利条約と権利ベースのアプローチ
障害のある人の権利とわが国の精神保健・医療・福祉
Disability Rights and Japanese Mental Health Law and Policy
池原 毅和
1
Yoshikazu IKEHARA
1
1東京アドヴォカシー法律事務所
1Tokyo Advocacy Law office, Tokyo, Japan
キーワード:
Psycho-social disability
,
Integrity
,
Legal capacity
,
Involuntary commitment
,
Convention on the Rights of Persons with Disabilities(CRPD)
Keyword:
Psycho-social disability
,
Integrity
,
Legal capacity
,
Involuntary commitment
,
Convention on the Rights of Persons with Disabilities(CRPD)
pp.713-720
発行日 2017年8月15日
Published Date 2017/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205432
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はじめに
21世紀初の国際人権条約である障害者の権利に関する条約(Convention on the Rights of Persons with Disabilities;障害者権利条約)。2006年国連総会採択,2014年日本国批准)は,他の人々に保障されてきた人権が障害のある人には十分に保障されてこなかった歴史的社会的状況に鑑みて,他の人々に保障されてきた人権を障害のある人にももれなく保障されるようにあらためて権利章典化したものであり,障害のない人には保障されていない権利を障害のある人だけに新たに認める人権条約ではない。しかし,その中心的な原理である平等性と社会的包容化(social inclusion)の保障,障害を人間の多様性の一部として尊重し(同条約3条),障害のある心身がそのままの状態で尊重されるべきこと(integrityの保障)を定める規定(同条約17条)などは,精神障害を予防,治療の対象として望ましくない改善されるべき状態と考えてきた精神保健医療のあり方に根本的な転換を求めている。また,障害のある人に対する合理的配慮を社会が負担すべきものとする規定(同条約2条)は,障害のある人に対する福祉的支援について,障害のある人の側に変更を求めるのではなく社会の側に変更を求める支援のあり方への転換を求めている。
本稿では,障害者権利条約が改めて明らかにした平等性と社会的包容化,多様性とintegrityの保障の視点を中心に21世紀に切り拓かれた障害のある人の権利がわが国の精神保健医療福祉にどのようにかかわっていくかを概説したい。
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