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米国で臨床修練を行うための外国医学校卒業者の受験資格には卒業校の医学教育の質に関する国際認証が必須となり,日本ではコア科の臨床実習時間を大幅に増やす必要に迫られている。このコア科には内科,外科,産科,小児科とともに精神科が入っているので,この外圧のお蔭で,精神科がようやく一般科並みの扱いを医学教育では受けられるようになってきている。しかし,医療法で一般病床と精神病床が区分されているため,医療としての必要度や技術評価には差がないのに診療報酬上は,栄養指導一つとっても精神病床には認められず,未だに患者:医師配置48:1が精神科病院の病床基準となっているなど,矛盾点は多い。これまでの負の遺産を解消し,これからの精神科医療を担う若き精神科医たちが魅力的な精神科医療のあるべき姿を描けるようにしたいとの思いにあふれた巻頭言をいただくことができ,感謝に堪えない。ところで,平成28年度診療報酬改定の際,日本精神神経学会と日本産科婦人科学会とが初めて連携して申請した,精神症状を呈する妊産婦の入院医療について「ハイリスク妊娠管理加算」が認められ,30年度改定では両学会と日本小児科学会とが連携してハイリスク妊産婦の母子の外来でのメンタルケアに対する共同指導管理料や早期集中支援管理料などの申請を行っている。このような学会の枠を越えて診療報酬改定にあたる試みは巻頭言で指摘されている精神科医療のパイを大きくする試みの一つと言えるかもしれない。また,展望で紹介していただいたPrader-Willi症候群に対する精神科医の関わりの医療経済的な裏付けにもなり得るものと期待される。30年度改定では,一般科と精神科の診療報酬上の格差のいっそうの是正を願っている。
本号の特集は「認知行動療法の現在とこれから—医療現場への普及と質の確保に向けて」である。ご企画いただいた松本和紀先生ならびに懇切丁寧な解説をいただいた各分担執筆の先生方に深謝申し上げたい。ご指摘いただいたように,診断も治療もマニュアルどおりに進めることが標準化・グローバル化とされている現在,認知にばかり目を向け過ぎて,悩んでいる患者をひとりの人としてみることができない面接に陥る愚は避けたいものである。
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