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本年6月に,厚生労働省(以下,厚労省)は健康寿命を男性が70.42歳,女性が73.62歳であると発表しましたが,平均寿命は男性が79.55歳,女性が86.30歳であり,団塊の世代も今年から高齢者の仲間入りをしますので,この健康寿命をこころのケアの充実と地域の再生により延長させることができるかに国の存亡がかかっております。このために厚生労働大臣は本年3月に従来の4疾病に精神疾患を加えて,医療法に基づく医療計画を策定する方針を決定し,各都道府県は2013年度実施に向けてその策定を急いでおります。
今月号の特集はまさにこの精神疾患の地域医療計画策定であり,医療計画の厚労省通知内容の作成に直接あたられた担当官からは財政的な基盤も含めた医療計画について解説いただき,また,厚労科研事業でレセプトデータを基にNational Databaseを作成しておられる先生方からはその活用法を解説いただきました。一方,医療計画策定に直接参加しておられる先生からはこの厚労省通知を医療の側でどう読み解き,医療計画策定過程での各機関,団体,職能間の合意形成のための協議の場をどう設定するかを指摘していただき,また,先行しているがんの医療計画についても,がん対策基本法の推進基本計画の5年ごとの見直しが医療法に基づく医療計画に反映される様子を明確にしていただくとともに,行政の講ずる施策が現場の実情に沿ったものとなるように,臨床にあるものが一致して提言していく責務についてもご指摘いただきました。今後,実態調査や改革の進捗状況評価を繰り返しながら,医療計画を5年ごとに見直し,必要な改革を地域ごとに確実に進めることで,精神科医療改革の道筋が見えてきており,わが国の精神医学界が精神科医療の在り方を論じつつ,行き詰まっていた数年の間に,現実のほうでは改革の歯車が銀河の動きのように確実に動いているといえます。
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