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年末年始から晴天が続いていた関東でも1月下旬には雪が降り,全国的にも雪の多い年のようですが,雪は豊年の徴,精神科領域でも懸案が一つひとつ解決し,良いことが積み重なる年となることを願っております。2009年に始まった障害者制度改革推進会議の工程表では,今年度内に精神障害者の強制入院のあり方に目途となっており,昨年の社会保障審議会では,重点的医療施策としての5疾病に精神疾患が加えられ,医療法に基づく医療計画が精神疾患についても今年度中に策定されることになり,また昨年12月には「こころの健康を守り推進する基本法(仮称)」成立のために超党派の議員連盟が結成されて,今年度中の成立が期待されるなど,今年は大きな成果が期待されております。精神科全体がこれらの実現に向けて詰めを誤らずに一致結束することが何より重要であります。そのために,正確な共通の認識に基づいた議論が必須であり,本誌もその情報をきちんと提供できればと願っております。
今月号の特集は「障害者権利条約批准に係る国内法の整備」であり,この条約批准は精神医療保健福祉の変革へのまさに黒船来航であります。この条約では差別の概念が従来よりも拡大されていて,合理的配慮を怠ることも差別であると規定しているようです。受け皿があれば退院可能な社会的入院の症例が,支援がないために退院できないのは,医療側が合理的配慮を怠っている,すなわち差別していることになります。また非自主的入院や行動制限を用いる精神科医療において,品位を傷つける取扱いからの自由,インフォームドコンセントなどをどこまで実現できるか,非自主的入院や行動制限を審査できる第三者機関をいかに整備するか,このための国内法の整備が喫緊の課題となっており,本特集では,必須な情報や視点・論点が様々な切り口から論じられております。ご執筆の先生方にこころから感謝申し上げます。専門でないわれわれにとって,相当しっかりと読み込まないと理解がしにくいところもありますが,随所に今後の精神科医療改革への萌芽をみることができます。
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