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本号掲載「試論」の「CBA2法」を拝読し,効果的な除細動に至るまでの一連の蘇生方法の流れについて精神科医療従事者すべてが日頃から研修を怠りなくしておくべきであることを痛感しました。それにしても,多くの抗精神病薬の添付文書にアドレナリンが併用禁忌であることは承知していましたが,抗精神病薬服用中の患者さんの救命救急の現場でこの禁忌の文言が障壁となっていることには全く気付きませんでした。厚生労働省の添付文書担当者とこの件で話し合ったところ「突然の致死的不整脈での心停止の場面では医師の裁量権に基づき禁忌薬を使用してでも最善を尽くすのは当然である」ことを個人的には認めておられました。しかし,添付文書の改訂については学会が正式な依頼書を提出してほしいといわれ,現在,その手続き中であります。その準備のため,リスペリドンやオランザピンなどの米国の添付文書を調べたところ,囲みの警告欄にアドレナリンとの併用禁忌についての記載はなく,注意喚起の記載さえどこにも見当たりませんでした。このことは多くの抗うつ薬についてのわが国の添付文書で,運転させないことを処方医に求めているのに対し,米国の添付文書では服用している患者さんがあの時は運転できなかったと分かる時点までは運転しないこととなっているのと同じであり,同一製薬会社の添付文書の文言が日米で異なっています。それでも,わが国の添付文書の改訂には抗精神病薬投与下での突然の心停止に対しアドレナリンが有効というエビデンスが求められることと思われます。
巻頭言では当事者主権について考えさせられるとともに,精神科医はなお未成熟なこの社会を変える一番の原動力にならなければならないことを学びました。添付文書に関しても規制当局と製薬会社任せにせず,エビデンスに基づいて適正化していくべきなのだと思います。
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