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編集後記
M. M.
pp.274
発行日 2016年3月15日
Published Date 2016/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205142
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臨床の貴重な経験に基づく珠玉の論文,臨床指標の検討のための緻密な研究論文,貴重な資料など実に多彩な論文を掲載することができ,ご執筆の先生方に厚く御礼申し上げたい。
巻頭言では,精神科専門医制度に関連して「患者や家族の苦悩を受け止める感性と共感する能力」の涵養について詳述いただいた。この感性と共感能力に基づいた精神科医療改革の推進もまた喫緊の課題である。改正された精神保健福祉法ではわが国が批准した国連の障害者権利条約に照らして,障害者の権利擁護の仕組みが十分でなく,さらなる改正が急務であり,また,障害者の品位を傷つける取扱いからの自由を保障するための個々の精神科病院の改革も必須である。しかし,個々の精神科病院の在院日数や残留率などの情報開示さえほとんどなされていない現状の中で,後方支援病院などに移送せず,自院で完結した医療を実践している一精神科病院の精神科救急入院病棟(患者:医師比が16:1)の1年時点の残留率が6.6%であると報告されたことは注目される。直近の精神保健福祉資料によれば,患者:医師比がほぼ48:1の診療体制での,1年の残留率はこの倍である。16:1の一般科並みの医療や多職種の関与の重要性が示唆されていると言える。さらに,1年越え症例の薬剤情報では,入院時すでに抗精神病薬が3剤以上で,クロールプロマジン換算で1,200mg以上であることが指摘されている。1年越えを防止するためには,ドーパミン受容体過感受性精神病の状態にある症例が相当数含まれていると予想されるので,クロザピン療法も含めた集中的な精神科急性期治療を実践できる高規格の医療施設の整備がなされる必要がある。
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