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はじめに
母子の健康水準を向上させるための国民運動計画である「健やか親子21(第2次)」13)では,基盤課題Aに「切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策」,重点課題①に「育てにくさを感じる親に寄り添う支援」,重点課題②に「妊娠期からの児童虐待防止対策」が挙げられている。妊娠・出産・育児における切れ目のない支援は,日本の医療・保健・福祉の重要課題となっている。現在,厚生労働省は妊娠期から子育て期にわたるさまざまなニーズに対し,総合的な相談支援を提供するワンストップ拠点「子育て世代包括支援センター」を各地域に設置することを計画している8)。おおむね2020年度までに各自治体が子育て世代包括支援センターを地域の実情などを踏まえながら全国展開をしていくことが目指されている。このような中で「妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援」の仕組み作りができることが期待される。
妊娠期からはじまる切れ目のない支援において,メンタルヘルス不調の母親を早期に発見しケアすることは重要である。母親のメンタルヘルスの不調は母子関係4)や子どもの発達1,5)にも大きな影響を及ぼす。メンタルヘルスの不調の妊産褥婦には,周産期の管理で産科医・助産師・看護師など,新生児健診で小児科医,体調不良で内科医,保健相談で保健師,治療で精神科医といったように多職種が関わるが,対応がまちまちで,見過ごされたまま対応がなされないケースも多く,連携が不十分であるのが現状である。メンタルヘルス不調の妊産褥婦に各機関で一定水準の統一した対応や他機関との連携が望まれる。近年,うつ病の早期発見,治療推進のため,地域のかかりつけ医(General Physician)をうつ病発見のゲートキーパーとして,精神科医(Psychiatrist)との連携を強化するシステムであるG-Pネットが各地で展開されている6,9)。同様に,メンタルヘルス不調の妊産褥婦やその児の養育の問題に対し関わるさまざまな職種が早期発見・早期介入のゲートキーパーになり,医療・保健・福祉が連携してサポートするような仕組みを母子保健の領域で構築していくことが必要であると考えられる17,18)。
現在,地域の母子保健・児童福祉の領域では,妊娠期から家族全体を支えていく仕組みが各地域でまさに模索されている。医療・保健・福祉がどのように協働し,妊娠期から母と子,その家族全体を支え,精神的な問題の予防・早期発見・早期介入を行っていくかが現在の重要な課題であろう。本稿では,妊娠・出産・育児に関わる各時期の保健福祉システムの現状とあり方について述べる。併せて,東京都世田谷区の母子保健関係者の協議会が作成した母子保健における医療・保健・福祉の連携のモデルも紹介する。
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