Japanese
English
特集 現代日本の社会精神病理
産業精神保健の現状
The Present Situation of Industrial Mental Health in Japan
近藤 喬一
1
,
北西 憲二
2
Kyoichi KONDO
1
,
Kenji KITANISHI
2
1町田市民病院神経精神科
2東京慈恵会医科大学第三病院精神医学教室
1Psychiatric Service Machida City Hospital
2Department of Psychiatry, Daisan Hospital, Jikei University School of Medicine
キーワード:
Mental health
,
Industrial psychiatry
,
Social pathology
,
Life cycle
Keyword:
Mental health
,
Industrial psychiatry
,
Social pathology
,
Life cycle
pp.391-397
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903432
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■はじめに
これまでは身体面でのそれがもっぱらであった職場における健康管理が,精神的な領域にその重心が移ってきている。産業精神保健という活動領域がそれである。現代人が職場で過ごす,実に40年以上もの長い年月を考えれば,人の半生がそこで費やされることになろう。しかも現今では平均寿命が大幅に延びたために,定年後も新しい職業を求める人々が増えてきている。そのことを思えば,今までこの領域が一部の人々の関心をそそったほかには,概してあまり重要視されてこなかったという事実が,むしろ問題であるといえるのではないだろうか。
しかし,精神保健の重視にはそれなりの理由があると思われる。よくいわれることだが,最近の技術革新の急激な進展によって作業環境に大きな変革が生じてきた。仕事はますます機械的で単調なものとなり,自動化や分業が推進される結果,職場における人間疎外の傾向は強まる一方である。このような変化が労働意欲や職業人としての意識,あるいは企業意識を損なう方向に作用するのは見やすい道理であろう。そのほかにも様々な新しい産業ストレスが増加してきており,この意味では,産業精神保健は今後ますます重要な活動領域として位置づけられることになろう。
このような観点から,まず我が国における産業精神保健の歩みを紹介し,現代における社会精神病理と産業精神保健の問題点,産業精神保健とライフ・サイクル,産業精神保健の実践などについて述べることにする。
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