Japanese
English
特集 妊娠・出産・育児とメンタルヘルスケア
妊娠・出産・育児期における向精神薬の適切な使用と注意点
Use of Antipsychotics during Pregnancy and the Postpartum Period
伊藤 直樹
1,2
,
村島 温子
2
Naoki ITO
1,2
,
Atsuko MURASHIMA
2
1帝京大学医学部附属病院小児科
2国立成育医療研究センター妊娠と薬情報センター
1Department of Pediatrics, Teikyo University, Tokyo, Japan
2Japan Drug Information Institute in Pregnancy, National Center for Child Health and Development
キーワード:
Antipsychotic agents
,
Pregnancy
,
Lactation
,
Congenital malformation
,
Risk assessment
Keyword:
Antipsychotic agents
,
Pregnancy
,
Lactation
,
Congenital malformation
,
Risk assessment
pp.115-125
発行日 2016年2月15日
Published Date 2016/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205109
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
近年,精神疾患合併妊婦が増加していると思われる。日本産婦人科医会による東京都内の分娩を取り扱う185施設へのアンケート調査(2015年4月)でも,年間約1,800件の精神疾患合併妊婦の分娩があり,出産全体の約2.1%に上ることが分かった17)。自傷他害疑いなど,精神疾患を適応とした妊産褥婦の救急搬送も発生している。
「妊婦の精神疾患の安定が,胎児さらには新生児・乳児の健康状態の安定につながる」。最近ではこの点が強調されており,たとえば妊娠うつ病では,突然の治療中断により,再発や妊娠継続困難,睡眠障害や不適切な栄養,アルコール・喫煙などへの依存などが指摘されている。さらに産褥期のうつ病との関連や,育児コンプライアンスの低下と育児困難,そして母体の自殺や乳児殺害といった悲劇を来すことがある。「新しい命を迎え入れ,新しい家族を築く」といった本来の意図とはかけ離れ,母親本人だけでなく家族全体の健康が不安定になる。
本稿では妊婦や授乳婦に薬剤を使用する立場から,妊娠・出産・育児期ごとにその注意点を述べたく思う。
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.