オピニオン DSM-5—私はこう思う
DSM-5にしがみつかない生き方—臨床家の輪に加わりたい大学人のために
井原 裕
1
1獨協医科大学越谷病院こころの診療科
pp.608-610
発行日 2015年8月15日
Published Date 2015/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204963
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
操作主義は浸透しなかった
操作主義診断学の普及の状況を検証する方法がある。それは精神神経学会専門医を対象に,DSM-5抜き打ちテストを行うのである。直ちに発覚するであろう,「ほとんどの専門医は,統合失調症の診断基準すらうろ覚えである」という事実が。
DSM-Ⅲが導入されたのは,最近のことではない。今となってみれば,ワンス・アポン・ア・タイム,いにしえの「昭和」の昔,1980年の出来事である。当時,世界では米ソの冷戦が続き,日本は戦後の55年体制の中にあった。国鉄は健在で津々浦々を走っており,プロ野球界では王貞治がこの年はまだ現役であった。コンピュータは汎用化されておらず,インターネットやスマートフォンは誕生すらしていない。
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.