Japanese
English
特集 リエゾン精神医学の現状と今後の展望(Ⅱ)
わが国における臓器移植精神医学のこれまでとこれから
Organ Transplant Psychiatry in Japan: A historical perspective
西村 勝治
1
,
小林 清香
1
,
菅原 裕子
1
,
筒井 順子
1
,
大下 隆司
1,2
,
石郷岡 純
1
Katsuji NISHIMURA
1
,
Sayaka KOBAYASHI
1
,
Hiroko SUGAWARA
1
,
Junko TSUTSUI
1
,
Takashi OSHIMO
1,2
,
Jun ISHIGOOKA
1
1東京女子医科大学精神医学教室
2代々木の森診療所
1Department of Psychiatry, Tokyo Women's Medical University School of Medicine, Tokyo, Japan
キーワード:
Solid organ transplantation
,
Organ transplant psychiatry
,
Consultation-liaison psychiatry
Keyword:
Solid organ transplantation
,
Organ transplant psychiatry
,
Consultation-liaison psychiatry
pp.267-272
発行日 2015年4月15日
Published Date 2015/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204890
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
- サイト内被引用 Cited by
はじめに
近年,わが国の臓器移植を取り巻く状況は大きく変化している。移植技術の進歩(優れた免疫抑制剤の導入など)によって治療成績は向上し,実施症例数も年々増えている。ABO血液型不適合などの免疫学的なハイリスク症例でも良好な生着率が得られ,かつては考えられなかった非血縁者からの臓器提供も可能になり,多くの人が生体ドナーとなる可能性を得ることになった。一方,欧米諸国では脳死・心臓死下移植が大半であるのに対し,わが国では依然として臓器移植(腎臓,肝臓)の約80%以上が生体ドナーからの提供によって成立しているのも事実である。「自国人の移植は自国内で行うように」という2008年のイスタンブール宣言などが契機となり,2010年に改正臓器移植法が施行されたことによって,これまで低迷していた脳死移植数も増加しつつあり,わが国の移植医療は大きな転回点を迎えている。
精神医学の立場からも,これまで多くの先達が移植医療に関与してきた。本稿ではわが国でこれまで報告されてきた臓器移植精神医学(organ transplant psychiatry)の成果について原著論文を中心に概観し,これからの方向性を展望する。紙面の都合上,症例報告の概観は一部を除いて割愛させていただいた。また,固形臓器(solid organ)移植に限定したため,造血幹細胞移植は含まれていないが,これについては都立駒込病院のAkahoら1)による特記すべき報告がある。なお,海外の動向を含めた現状については他に記したため,そちらも参照いただきたい22)。
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.