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はじめに
2014年6月に「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」が成立し,公布された。この法律は複数の法律を一括して改正できる形式になっており,大きな柱の1つは,医療法改正による地域医療構想の策定である21)。その施行日は2015年4月1日であるが,そのために「地域医療策定ガイドライン等に関する検討会」が厚生労働省に設けられ,地域医療構想のガイドラインが検討されている。本稿が出版される頃にはその内容が明らかになっていると思われるが,現状では議事録や資料のみをホームページで閲覧できるにすぎない13)。しかし,この地域医療構想の主たる政策目標は構想区域における病床の機能区分(高度急性期,急性期,回復期,慢性期)ごとの将来の病床数の必要量などに基づく,当該構想区域における将来の医療提供体制に関する構想であり,これは病床機能分化の推進を意味していると考えられる21)。日本は欧米と比較して,病床数が多く,平均在院日数が長く,病床あたりの医師および看護スタッフが少ないという特徴を有している。医療の質,医療資源の問題などを鑑みても,現状は好ましい状況とは考えられず,病床の機能分化と削減,地域包括ケアや在宅医療などの拡充が今後の医療体制を考える上での柱になると思われる。この医療提供体制の変化を「コンサルテーション・リエゾン精神医学」(以下,CLPと略す)という視点からみるとどう捉えられるであろうか。
以前から言われているCLPの概念は,一般病院(もしくは総合病院)内にとどまらずに地域医療や会社・学校などとの間でも行われ得るものとされている22)。しかし,今日までのCLPは一般病院で行われる精神医学の一端として論じられることが多く,精神医療サービスの充実や多職種を交えたチーム医療などが議論されてきた。これらの議論がすでに十分という訳ではないが,現状の医療の中では病院内にとどまらず,地域での活動をも視野に入れることを要求されている。実際,精神疾患を有する患者に身体合併症が出現した時や,内科で継続診療されている認知症患者にBPSDが出現した時,在宅の緩和ケアの患者に精神症状が出現した時にどのような体制で患者をサポートすればよいのか,など具体的にさまざまな状況の想定が可能である。今後,地域医療とCLPの関係はより密接になっていくものと考えられ,地域医療の中で行われるCLPは一般病院の精神科医のみならず,精神科病院やクリニックなどに勤務する精神科医も参入を要求されるものと思われる。
今回の特集ではさまざまな身体疾患領域におけるリエゾン精神医学の現況が紹介されており,その中で地域医療とのかかわりが一部取り上げられているものと予想しているが,本稿では地域医療を考える上で問題として取り上げられることの多い「精神疾患患者に認められる一般的な身体合併症の問題」とCLPの関わり,および今後の展望などについて概説していきたい。
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