Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
■はじめに
米国においては総合病院精神医学が発展し,精神疾患の入院治療の大部分は総合病院で行われるようになった18)。しかし我が国においては,精神科病床のうち総合病院精神科の占める割合は4.6%であり13),1994年度版厚生省編集「病院要覧」によると,総合病院の中で精神科のない病院が47.7%,精神科外来のみの病院が31.4%,精神科が病床を持つ病院が20.8%であるというのが現状である12)。それゆえ我が国における総合病院精神医学の立ち遅れを指摘する声は多い。その要因として(1)総合病院の経営者や管理者に精神科が必要であるという意識が低いこと,(2)精神病床の主体が単科の精神病院であること,(3)多くの都道府県では地域保健医療計画上の病床数よりも上回っているため,有床総合病院精神科の新規開設もしくは増床が難しくなっていること,などが挙げられる5,18)。さらに総合病院精神科自体の問題として,採算性といった医療経済上の問題を指摘する報告は多い5,6,12,13,16,18,20)。現に精神科のない総合病院の病院長の見解として,現時点で精神科の設置は困難な状況にあるとしたものが61.9%であるが,経済的な基盤が確立したら精神科を拡張したいと答えた院長は80.4%であり13),総合病院精神科の発展のために採算性の問題は,精神障害者に対する差別と偏見の問題とともに重要な問題となっている。
総合病院精神科の役割は,大きく分けると2つになる。第1はリエゾン精神医学であり,第2は地域精神医療の1部門として狭義の精神医療を実施することである6)。リエゾン活動は,現状の医療制度の中では総合病院精神科の診療報酬に直接結びつかないが,リエゾン精神医学の現代医療における役割,重要性を考えれば,不採算性を覚悟しても総合病院に精神科を設置して実践しなければならない分野と考えられる。しかし現実には,現在の医療事情を考えると採算性,収益性が優先されるのが現状である。以上のことから総合病院精神科の発展のためには,現状の医療制度の中でいかに採算性を向上させるかが重要となる。
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.