巻頭言
総合病院精神科の設置を望む
松本 啓
1
1鹿児島大学医学部
pp.902-903
発行日 1989年9月15日
Published Date 1989/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204763
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数年前から役職上,県や市などの地域医療についての会合に出席することが多くなった。その際,私が感じることは,これらの会合へは役職という立場での出席なので,これらの席上で話題となる一般診療科中心の話は,一応抵抗なく受けとることができるが,立場を変えて,精神科医としてみると,会合で取りあげられる総合医療や地域医療などの中に精神医療の問題はほとんど含まれておらず,いつも枠外扱いにされているように感じられる。したがって,多くの場合,会議の委員の顔ぶれをみても精神科医を余りみかけない。21世紀の医療の最大の課題は老年医療対策であることは論をまたないところであり,それは心身両面の健康を保持することに主眼が置かれなければならないと思う。我々精神科医と同じく,医学生時代に精神医学の教育を受けたはずの医師の会合でさえ,ほとんど精神医療や精神衛生については別扱いであるから,医師以外の人々の会合では,まず話題となることはない。近い将来に,国民の多くは80歳以上まで生きることになるであろうし,そのようになれば,痴呆老人が国中にあふれるようになることも架空の話ではなくなるように思われる。したがって,精神医療を抜きにしては片手落ちであり,今から精神医療を含めた総合的な心身両面からの医療対策をたてていかなければ,手遅れとなるであろう。
他方,我々精神科医にも問題がないわけではない。もっと自分の殻から抜けだして,一般診療科と協調していく姿勢を示す必要があり,精神科だけは別だという感覚を精神科医自身が捨て,身体疾患を取り扱う一般診療科と協調して,積極的に総合医療や地域医療などに参加するように努めなければならない。
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