医療の周辺 法律学と医療・3
病院の設置・管理と法
下山 瑛二
1
1東京都立大学法学部
pp.1052-1053
発行日 1981年12月1日
Published Date 1981/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207627
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1.前回号で「地域保健医療」の問題に触れた.このような地域保健医療の体系を組み立てるのに当たっては,病院というものが重要な役割を演ずることは言うまでもない.しかし,現在の病院の地位づけは必ずしも明確でなく,また,地域保健医療の構想の中で提示されている病院システムのごときものも,現在の病院状況の中へ,どのようにして組み込まれ得るのかは,はっきりしていない.
医療関係者ならだれでも知っておられることと思うが,アメリカの病院総数約7,100のうち私立病院(病床約20以上)が885であり,西ドイツでは総数約3,400のうち私立病院は約29%であり,イギリスにおいては,ナショナル・ヘルス・サービス(NHS)の関係で総数約2,650のうち私立病院はない.これに比し,我が国の場合には,総数約8,500のうち私立病院が約6,100,実に72%弱に及んでいる(昭和53年度).これらの事情は,歴史的にみれば,我が国の近代化過程と密接にからんでおり,私立病院の果たしてきた役割というものも決して軽視することはできない.しかし,このような発展過程は,同時に現在の保健医療体制に一定のヒズミをもたらしてきていることも無視し得ない.新聞の報ずるところによれば,過疎地の無医村克服のためには,当然に公的性格の病院に依存せざるを得なくなる.
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