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綜合病院の精神神經科病室設置の必要性について
關根 眞一
1
1國立武藏療養所
pp.5-7
発行日 1952年10月1日
Published Date 1952/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200539
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最近の新聞紙上を賑わす自殺,尊卑族殺し,次いで青少年の諸問題等その他の社會問題は精神衞生の見地から考究批判される點が多いことは注目すべきことであつて,看過し得ない重要な世相の一駒である。これらの社會問題は社會全般に精神衞生に關する知識と理解が深まれば事前に解決されて,家庭の悲劇も救い得ることもあり得るのであるが,未だ社會全般に精神衞生に關する理解が極めて貧弱なために,かかる社會問題が眞劍に考慮されずに,一時の感激にしか取扱われないのである。今後これが對策としては,日常生活に精神衞生の知識を普及せしめ,健全な社會生活を作りあげることに施策を講ぜざれば,平和文化國家の建設というスローガンは全く空念佛に終つてしまうことになるので憂慮に堪えない。
現在の社會情勢の複雑性は今後ますます深刻化の一途をたどるこどと考えられるので,かかる社會環境に對處する人間生活にあつては,正しい健康法を徹底せしめることが必要であつて,それには是非とも精神の健康を基底として築き上げねばならぬ。しかるに世間一般の常識として,健康と云えば身體の點にのみ重點が置かれて,精神の面に於ける健康に關しては殆んど無視されているといつても差支えないのである。眞の健康とは心身共に兩立した車の兩輪の如きものであつて,いづれを分離しても決して成り立ち得ないものである。
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