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I.はじめに
抗うつ薬の作用機序を明らかにしようとする研究は,副作用のない,即効性の治療法の開発のために必要であるばかりでなく,うつ病の病態解明のたあにも不可欠なアプローチのひとつである。1960年代に提出されたうつ病のセロトニン欠乏仮説も主として薬理学的研究成果に依拠していたといえる1,2)。アミンを枯渇させるレセルピン投与はうつ状態を生じ,一方抗うつ薬投与はセロトニンの再取込み阻害に基づくセロトニン伝達の亢進により,抗うつ効果を発揮すると考えられた。この仮説に則り,より選択的なセロトニン再取込み阻害薬の開発がすすめられ,またセロトニン前駆物質であるトリプトファンや5HTP療法が試みられてきた3)。その治療効果については否定的見解もあるが,少なくともある一群のうつ病には有効といわれており,うつ病の病態にセロトニン欠乏が存在する可能性はあるといえる。
しかし一方,アミン再取込み阻害能のない抗うつ薬が開発され,臨床応用されているし,多くの抗うつ薬がセロトニン受容体を阻害することも知られている。しかも抗うつ薬は抗不安薬と異なり即効性ではなく,1〜2週間の反復投与後に抗うつ効果が発現するといわれているが,抗うつ薬の示すセロトニン再取込み阻害能は投与後数10分から数時間に出現する効果であるので,再取込み阻害能と臨床効果との間に時間的なずれが存在することになる。したがって抗うつ効果の発現は抗うつ薬のアミン再取込み阻害能に基づくセロトニン伝達の亢進の結果であると単純には言えなくなった。このような研究の進展のなかで,1970年代後半より抗うつ薬の作用をモノアミン受容体の側から検討しようとする試みが多くみられるようになった。
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