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展望
躁うつ病の臨床精神医学的研究の動向(1974〜1982)—第2回
On the Present Stage (1974-1982) in Research of Manic-depressive Illness from Clinical Psychiatry
坂本 暢典
1
Nobumichi Sakamoto
1
1厚生連尾西病院精神科
1Department of Psychiatry, Kouseiren Bisai Hospital
pp.1146-1156
発行日 1984年11月15日
Published Date 1984/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203847
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VI.鑑別診断―分裂病,不安神経症との関係を中心に
日常臨床においては,ある症例を躁うつ病と考えるべぎか,分裂病と考えるべきか迷うことがしばしば起こる。ことに,リチウムが臨床的に使用されるようになってから,分裂病的症状を伴う躁うつ病に関心が向けられるようになってきた。
Carpenterら(1974)は,Schneiderの一級症状の出現率を各疾患ごとに比較し,その診断的価値についての評価を行なった。その結果,一級症状は,分裂病において57%と最も多く認められるが,躁病で23%,うつ病の16%にもみられた。それゆえ,Schneiderの一級症状のみに頼って分裂病の診断を下した場合,そこにはかなりの数の躁うつ病が混入している可能性がある。Morrisonら(1978)は,精神科診断における誤りについて,詳しい症例を呈示して発表している。その中で,最もおかしやすい誤りは,両極型躁うつ病の患者を分裂病としてしまうことであるとしている。またPopeら(1978)は,分裂病と躁うつ病の鑑別診断についての綜説の中で,Schneiderの一級症状などの分裂病性症状は,躁うつ病の20〜50%に認められ,いわゆる分裂病性症状に頼つて分裂病の診断を下すのは危険であると指摘している。そして,躁うつ病性症状と分裂病性症状が併存する場合には,むしろ躁うつ病性症状の診断的価値が高いと思われるにもかかわらず,現在の大勢では,分裂病性症状に重点が置かれており,これによる躁うつ病を分裂病とする誤診がかなりあるとしている。
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