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特集 アルコール依存症の精神医学—東京都精神医学総合研究所 第10回シンポジウムから
アルコール依存症の治療—病院医療から地域医療へ
Therapy for Alcoholism: From hospital care to community care
三船 英男
1
Hideo Mifune
1
1国立武蔵療養所
1National Musashi Sanatorium
pp.1303-1312
発行日 1982年12月15日
Published Date 1982/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203509
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I.はじめに
アルコール依存症の患者は,他の病気とは違って,内科領域からも精神科からも歓迎されない存在で,“アル中”として嫌われている5)。家庭生活も社会生活も破綻に瀕し,自らの健康を損いながらも治療を拒否し,大量の連続飲酒を繰り返し生命の危険まで冒している。しかし世間一般の無知と偏見のために,患者・家族共に医療機関への相談.受診が遅れてしまうことが多い。また相談を受けた病院,保健所,福祉事務所等では相当の努力と苦労をしていても,個々の諸機関が孤立的で連携が不十分なたあに効果をあげにくい面もある。さらに,専門治療病棟を有する病院が極端に少ないために,受診希望者を十分に受け入れられず,特に緊急患者への対応は困難である。一方,緊急受け入れ可能な病院では特別な治療プログラムをもっていないことが多く.これらの事情のためにせっかく治療ルートにのっても再飲酒を反復する患者が多い。
このように困難な問題が山積しているアルコール医療状況にあって,専門治療病棟をもつ国立武蔵療養所の治療活動を報告し,あわせて病院医療の重要性と地域医療への方向性について述べてみることにする。
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