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I.はじめに
今回筆者にあたえられた課題は「てんかんの生化学的側面」で,それを臨床と結びつくようにわかりやすく解説し,そのためには多少のspeculationをまじえてもさしつかえないとのことである。動物実験で得られた成績をヒトの臨床に還元することはもとより困難なことであるが,動物を用いた実験的研究は最終的には疾病理解に役立てるためのものにほかならないので,あえて筆者なりの考えを述べることにした。
さて,てんかんの本態や発作の成立機序を知るには脳そのものに実験的操作を加えて研究する必要があり,それには動物実験が不可欠な手段となる。しかし動物実験モデルには大きな制約があることも事実で,①人間と動物の違い,②「てんかん」モデルか「けいれん」モデルか,③けいれんの生化学的な異質性を考慮しておく必要がある。とくに②は重要であり,実験モデルがてんかんの臨床的な概念規定を満たしているか否かを慎重に判定する必要がある。すなわち,発作が中枢の異常興奮に由来し,けいれん準備性が長期にわたって持続してしかも自発発作が反復して出現するものが「てんかん」モデルであり,単に外因だけに依存して起こる「けいれん」とは区別されねばならない。また③については,たとえばcocaineで誘発されるけいれんと抑制されるけいれん(biphasic effect)35)があるように,生化学的機序を異にする異質なけいれんが存在する。こうした制約を考慮しながら今回はキンドリングモデルによる成績をとりあげたが,それはてんかん,とくに二次全汎化発作の好適なモデルとしてすでに評価を得ているためである。したがって今回はてんかんのうちでも二次全汎化発作の生化学的側面を述べることになる。
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