Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
てんかんは神経疾患の中で最も頻度が高い疾患であり,1,000人に5~10人の割合でみられる(人口の0.8~1%ともいわれている)。てんかんは発作性疾患であり,発作がなければてんかんを持たない人と同じ普通の学業生活や社会生活・活動を行うことができる。しかしながら,発作中の症状のために種々の社会的側面が生じ,誤解に基づくstigma(烙印ないし偏見)が生じることとなる。さらには,非けいれん性重積状態,例えば複雑部分発作重積状態や欠神発作重積状態に関する知識不足のために治療の遅れの原因ともなっている。
てんかんに関する社会的側面を解決するためには,医師も正確な診断と治療ができるようになるとともに,てんかんは治療して発作がなくなれば社会活動にも何ら問題がない疾患であることを広く認識してもらうために,一般の人へも啓発が必要である。さらに,てんかんを持つ人の人権には十分な配慮が必要である。
てんかんの社会的側面には学業,就業,結婚,妊娠,自動車の運転,stigma,抗てんかん薬の長期間服用とその副作用の問題,内服薬中止のタイミングなど様々な問題がある。しかしながら,これらの問題に対しては十分な科学的根拠に基づいた回答が得られていない現状でもある。世界てんかん学会が提唱している「てんかんとともに生きる“Living with epilepsy”」という言葉の重要性をすべての人が忘れてはならない。医師は単にてんかん発作を治療するだけではなく,慢性疾患としてのてんかんを持つ人の社会的側面にも十分気を配り,治療しなければならないが,十分な科学的根拠に基づいた対処法がないため患者さんとともに苦慮していることも事実である。てんかんを持つ人の就学率,結婚率,出産率,就職率は同年齢の一般人口と比較して国内外ともに低いと報告されている2,15)。また,結婚すべきではないという,誤った考えを持つ人たちがいるので,誤解,偏見,迷信にも配慮と啓発活動が必要となる。
ここでは,てんかんに関する様々な社会的側面に関するレビューを述べる。
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.