Japanese
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展望
自閉症の生化学的研究の現況について
Biochemical Studies on Autistic Children
星野 仁彦
1
Yoshihiko Hoshino
1
1福島県立医科大学神経精神科
1Dept. of Neuropsychiatry, Fukushima Medical College
pp.902-925
発行日 1980年9月15日
Published Date 1980/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203146
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I.はじめに
1943年,Kanner77)が早期幼児自閉症の症例を最初に報告して以来,自閉症については多数の精神分析学的,心理学的,生物学的研究がなされてきた。そしてこれらの研究がすすむにつれて自閉症概念はKannerの初めの概念から大きく変化し,Rutter121〜123),Rimlandら111)によって精神分裂病からは明確に区別され,現在では自閉症を生来性の知覚—認知系および言語の障害を伴った発達障害としてとらえる立場が主流となっている。またKanner77)は当初,器質的障害をうかがわせる所見を持つ症例を自閉症の診断から除外しようとしたが,最近は神経生理学的研究や長期の予後追跡研究などにより,脳障害の存在が否定できない自閉症児が少なからずいることが認められている。
さて,近年神経化学および精神薬理学の急速な発展に伴って,精神症状や行動と脳内の神経化学物質,とりわけ生体アミンとの関連性が指摘され,躁うつ病や精神分裂病を初めとする種々の精神疾患において,生化学的立場から病因論的研究がなされている。自閉症に於ても,serotonin代謝やcatecholamine代謝を初めとして種々の方面から生化学的研究が報告されている。そこで,自閉症の生化学的研究に関する内外の文献を展望し,更に著者の研究をおりまぜながら,生化学的立場からその病因仮説を考察してみたい。
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