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特集 精神鑑定
XYY個体の刑事責任能力—1鑑定例の報告
Criminal Responsibility of the XYY Individual: A case report
武村 信義
1
Shingi Takemura
1
1東京大学脳研究施設心理学部門
1Section for Human Genetics & Criminology, Institute for Brain Research, School of Med., Tokyo Univ.
pp.1325-1331
発行日 1978年12月15日
Published Date 1978/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202862
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I.はじめに
XYY個体(47, XYY)については,すでに著者(1976)7)の展望に示したごとく,Jacobs, P. A.(1965)5)の業績以来,犯罪の原因としての意義が問題となっている。それはこの性染色体異常が一般新生男児集団よりも犯罪者集団においてはるかに高い頻度で見出される事実や,高度の犯罪性ないし反社会性,あるいは性倒錯を示す症例が少なくないことや,異常性格が頻繁なこと,あるいは早発犯罪が多く,矯正困難であり,患者の家族には異常者が見出し難いなどの報告があいついで出されたことなどに関係がある。そのためXYY個体については司法精神医学の領域においても刑事責任能力が一つの問題となっている。
著者は最近Asakaら(1971)が以前発見し観察したことのあるXYY個体の非行少年のひとりについて第一審裁判所から精神鑑定を命じられた。これは成人のXYY個体の精神鑑定例としては本邦第1例であると思われ,その事例を報告し,司法精神医学的考察を行なうことは将来のわが国におけるXYY犯罪者の精神鑑定に資すると考える。また本症例はわが国では報告数の少ない淫楽殺人例であり,犯罪心理学的にも興味深い症例である。したがってこの報告では,できるだけ多くの紙面を症例の記載にさくこととした。
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