Japanese
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特集 精神鑑定
刑事精神鑑定についての一考察
A Consideration on Psychiatric Evidence in Criminal Cases
中山 宏太郎
1
Kohtaro Nakayama
1
1京都大学医学部精神神経科
1Dept. of Neuropsychiatry, Kyoto Univ. School of Med.
pp.1373-1378
発行日 1978年12月15日
Published Date 1978/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202869
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I.はじめに
精神神経学会総会でも,1978年9月,司法鑑定のシンポジウムが持たれた。昭和44年金沢学会以来の精神障害者の人権問題—昭和46年の保安処分制度新設反対決議—病院改革の諸々の試みの流れがようやく,現存の精神障害である被告,被疑者ないし受刑者へ及んできたものと思われる。これは必然的な流れでもあるが,人権問題の現実的解決が,総体としては遅々として進んでいないのと同様,今後長期にわたる努力をわれわれに課すことと思われる。
病院改革—特殊病院を設けた上で説かれるものでなく,すべての病院における人権尊重を基盤とした医療の創設には,主要に厚生省,病院資本が大きな壁となっているが,司法鑑定では,法務省諸機構(検察庁,拘置所,刑務所等)と裁判所がさらに巨大な壁となって立ち現われてくる。
しかし,それにもまして,われわれ精神科医が過去に行なった非医療的な司法鑑定を再検討し当面なし得る改革について合意を見出すことが急務であろう。島田事件(被告人赤堀),帝銀事件(被告人平沢),弘前大学教授夫人殺害事件(被告人那須)等における精神鑑定の課した役割につき,諸氏がその問題指摘を行なっていることは周知のことであるし,読者諸兄が是非とも,これらの検討をされることが望まれる。
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