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Ⅰ.まえがき
フランスにおける精神鑑定,特に刑事精神鑑定について紹介したい。その前に,本文理解の手助けになると思われるので,フランス裁判制度について簡単に触れておく2,11,18)。フランス裁判制度は司法,行政の二元制をとっており,フランス公法理論の通説では三権分立の原則から,司法・行政両裁判所とも法律(loi)の審査権を持たない。したがって,わが国のように憲法判例は重要な意味を持たない。刑事裁判には予審注1)(instruction préparatoire)制度が取り入れられており,一審裁判所として,重罪法院(la Cour d'assises)―重罪(crime)事件を審査する―,軽罪裁判所(le tribunal correctional)―,軽罪(délit)事件を審理する―,違警罪裁判所(le tribunal de police)―,違警罪(contravention)事件を審理する―などがあり,上級裁判所として,わが国の高等裁判所に相当する控訴院(la Cour d'appel),そして最高裁判所に相当する破毀院(la Cour de cassation)がある。
1)予審裁判所(juridiction d'instruction):軽罪裁判所判事から選任される,原則として1名の予審判事と,控訴院内に設置されている重罪公訴部(chambre d'accusation)より構成されている。警察官を指揮して犯罪を証明し,証拠集めと一件調書を作成し,公判を維持できるかどうか決定する。重罪公訴部は部長1名,控訴員判事2名,検察官1名より構成され,司法警察の監督を行ない,起訴の決定権を有している。
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