Japanese
English
研究と報告
精神症状を呈した特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の1例
A Case of ITP with Psychotic State
山本 光利
1
,
佐藤 光源
1
,
猪谷 健
1
,
大月 三郎
1
,
町田 周二
2
Mitsutoshi Yamamoto
1
,
Mitsumoto Sato
1
,
Takeshi Inotani
1
,
Saburo Otsuki
1
,
Shuji Machida
2
1岡山大学医学部神経精神科
2岡山大学医学部第三内科
1Dept. of Neuro-psychiatry, Okayama Univ. School of Medicine
2The 3rd Dept. of Internal Medicine, Okayama Univ. School of Medicine
pp.1223-1228
発行日 1978年11月15日
Published Date 1978/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202847
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
特発性血小板減少性紫斑病Idiopathic thrombocytopenic purpura(ITP)は,皮膚,粘膜,その他の組織に出血症状を来す疾患で,急性型と慢性型があり,前者は小児に多く,後者は成人に多い。その病因に関しては,未だ確証はないが,近年,自己免疫疾患として考えられている。また,本症は全身性エリテマトーデス(SLE)に移行することがあり注目されている。
本症の臨床症状は多様であるが,精神症状としては不穏,興奮,昏迷,昏睡などの意識障害が見られるという1)。ITPに精神症状を伴うことはまれと考えられており,本邦では江村ら2)による報告がある。江村らは数日のけいれん発作とそれに続いて精神症状の現われたITPを経験しているが,われわれは長期にわたりITPの再発を繰り返し,それに同期して精神症状を呈した例を経験した。本例は江村らの報告にみられる健忘,失書等にとどまらず,幻覚妄想状態を伴う精神病様状態を呈した。われわれの知る限りでは,ITPにおいて著明な精神病様状態を呈したとの報告はなされていないので報告するとともに,若干の考察を行ないたい。
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.