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I.はじめに
てんかん患者は従来いわゆるてんかん性性格を示しやすいと考えられてきたが,むしろてんかん者の中には,対照的な2つの性格類型があるとJanz1)は考えている。すなわち,彼のいう睡眠型のてんかん者は,従来から言われてきたてんかん性性格(迂遠性,粘着性等)を示すが,覚醒型のてんかん者は,これとはかなり違った性格(外向的,小児的,不安定で影響を受けやすいこと等)を示すというのである。いわゆるてんかん性性格は,執着性格に相通ずるところがあるのではないかと考えられ,大熊ら2,3)は,心理テストの成績を中心に,両者を比較検討している。一方,覚醒てんかん者の性格は,かつて河合4)によって「受身の外向性」として特徴づけられたが,こちらのほうは,いわゆるヒステリー性性格との類似がみられるのではないかと考えられる。ヒステリーとてんかんとの関連領域については,これまで症候論的あるいは脳波学的に,数々の興味ある検討がなされてきた5,6)。またここで問題にしようとしている非定型精神病においても,主として脳波学的な見地から,てんかん性の要素について検討が行なわれてきたし7〜9),さらに,非定型精神病者の病像は,しばしばヒステリー的色彩を帯びてくることが観察される10)。特に近年ヒステリーという診断名が用いにくくなるに従い,われわれは「二重意識」や,転換症状とも体感幻覚ともつかぬ症状を示す急性の精神病を,ヒステリーと呼ばず非定型精神病の内に入れる傾向にある。これらの点から,ヒステリーを介して,河合11)の指摘するように,非定型精神病と覚醒てんかんとは,互いに密接な関係を保っているのではないかと推察される。ここではいわゆるヒステリー性性格を,非定型精神病者および覚醒てんかん者の性格の尖鋭化として捉えながら,両者の人間像を考えてゆこうと思う。
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