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展望
アルコール症の疾病概念をめぐって(そのⅡ)—アルコール依存の機構とアルコール症
On the Disease Concepts of Alcoholism, Ⅱ.: Alcohol dependence; mechanism and its relationships to alcoholism
斉藤 学
1
1慶応義塾大学医学部精神神経科
1Dept. of Neuropsychiatry, School of Medicine, Keio University
pp.120-147
発行日 1978年2月15日
Published Date 1978/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202718
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I.はじめに
嗜癖化した飲酒行動が病気とみなされ,医療的に処遇されるようになった経過,その際の疾病概念,それに対する世人の反応などを「そのⅠ」に述べた。ここでは飲酒という行動の嗜癖化そのものに焦点を当て,その過程を明らかにするような最近の知見を要約していきたいと思う。その際まず嗜癖行動一般がいかなる機序のもとに生じ,人間行動全体にどのような意味を持つかを検討し,次いで薬剤摂取の嗜癖化つまり薬物依存に共通する現象を見,最後にアルコール依存に特異的な諸問題を取り上げることにしよう。こうした構成をとることによってアルコール依存と他の嗜癖行動との比校が容易になり,その位置づけが可能になるであろう。こうした作業が終わってアルコール依存の機構と意味が明確になった後で,再びアルコール症の概念を取り上げ,両者(アルコール症とアルコール依存)の関係を検討してみるつもりである。
嗜癖行動に関する科学は近年急速に発展しその内容は日を追って豊かになっている。何分,薬理学,行動心理学から,社会学,文化人類学に至る多岐にわたる領域にまたがる問題であり,一編の論文でその全貌を伝えることは難かしいが,できる限り網羅的に輪郭をたどりながら必須と思われる諸知見の集録に努めよう。
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