Japanese
English
研究と報告
緊張病性昏迷の脳波
EEG in Catatonic Stupor
山口 直彦
1
,
田中 勇三
1
,
大西 道生
1
Naohiko Yamaguchi
1
,
Yuzo Tanaka
1
,
Michio Onishi
1
1神戸大学医学部精神神経科
1Dept. of Neuropsychiatry, Kobe University School of Medicine
pp.149-158
発行日 1978年2月15日
Published Date 1978/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202719
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I.はじめに
昏迷はJaspers11)によれば,「意識は覚醒していて,運動制止の状態で一言も発せず,心的現象の了解可能な徴候を示すことなく,自己との関係を持とうとするすべての試みに向かって無反応にとどまっている状態」である。このように昏迷は一つの外に表われた状態像として定義される。もちろん,その時の内的体験は抑制,制止,阻害,困惑,幻覚妄想などいろいろである。疾病学的にみても,この状態は精神分裂病だけではなく,うつ病,心因反応,ヒステリー,てんかん,器質性精神障害などにもよくみられ,心的機能の解体がある水準にまで達すると生じてくる非特異的な生体の反応と考えることができる。一口に昏迷といっても,筋緊張の面からいえば弛緩性昏迷と緊張性昏迷,その程度からいえば完全な昏迷から亜昏迷,精神病理学的には幻覚妄想が豊富な例から体験の乏しい例まで,種々の段階が考えられる。精神分裂病圏内では,昏迷は運動性亢奮とともに緊張病症状群の中に入れられ,定型的分裂病よりもむしろ非定型群によくみられる症状である。緊張病症状の場合,多動,無動などの運動性の症状,自律神経症状およびその身体随伴症状,経過の挿間性または周期性などの特徴から,その基盤に生物学的な機能変化が予想されるのであって,Gjessing, R. 7)の周期性緊張病に関する研究をはじめとする多くの生物学的研究はこれを裏づけるものである。その中には脳波学的研究も含まれるのであって,われわれも最近,緊張病性昏迷をきたした10症例について,その脳波像の変化を詳細に検討し,新しい知見を得たので報告する。
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