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I.はじめに
精神科医療の現場で行なわれる就労援助活動の歴史は,決して新しいものではない。古くは,われわれ現役が精神科医療にたずさわるはるか以前から行なわれており,例えば病院精神医学誌上にも,戦時中から戦後にかけてと,昭和20年代の東京都立松沢病院における就職退院after careの経験について,横井の報告がある。昭和30年代の半ば以後,精神障害者の社会復帰を標題とする報告は数多く,就職・復職の問題に重点のおかれたものも少なくない。しかし,精神科リハビリテーションの過程の中で,極めて重要な場面であるにもかかわらず,就労援助活動という一断面に焦点を絞って論じたものは,意外なことにあまり多くない。
その理由のひとつには,精神病院における外勤作業の検討でこと足りると考えられたこともあるかもしれない。もうひとつには,多くの精神科医がこの活動を精神科ソーシャルワーカー(以下PSWと省略)にまるごと委ねてきたことに示されるように,就労援助活動を精神科の医療技術とは別物とする考え方があったのかもしれない。しかし,精神科リハビリテーションの過程の中で,ここまでは医者と看護者が,ここからはPSWが,この場面では作業療法士が,あの場面では臨床心理士が,そして地域に帰ったら保健婦が,というように役割分担を明確にすることは,リハビリテーションを受ける側からいえば不本意なことだろう。それぞれの役割には柔軟な重複があるのが自然であり,したがって就労援助活動も医療技術として検討されるべきだし,その中から他の場面では見出せなかった精神医学的学説が生まれても不思議はないのである。東京都立世田谷リハビリテーション・センターでは,職種をこえて技術系全職員が就労援助に当たっている。また,当センターの活動には,病院における外勤作業と共通する部分があるとともに,病院入院患者を対象とする場合とは質的に違った部分もある。
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