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I.はじめに
精神障害者のリハビリテーション援助の中で最も大切な最終目標は,患者をまがりなりにも1人の社会人として独立させることである。そのためには一定の職を持たせ,生活の資を得させることが必要となる。すべての患者に何らかの職業に正式就労させることが理想であるが,種々の程度に残った欠陥や,症状の不安定さ,社会訓練の不足などで正式就労が不可能な患者が決して少なくないことは衆知のとおりである。そこで理解のある事業主にハンディキャップを承知の上で,訓練を兼ねて使っていただくという方法が考えられたわけで,この事業主を一般に職親と称しているわけである。精神病院で院外作業をお願いしている事業主を職親と通称しているようであるが,事業主の善意と負担だけに依存していては本式には発展しないということで,公的に委託費を出して,この負担を軽減して,十分な訓練を依頼しようというのが職親「制度」である。東京の精神衛生センターでは,後に述べるような社会復帰援助の過程で職親制度の開発に踏み切ったものであるが,その後この制度の必要性を痛感していた全国のいくつかの県が,後を追うように次々とこの制度を発足させている。これはこの特集で関根・原田が長野県で調査した結果を資料として本論文のあとに発表している。むろん国としての制度はないわけであるが,将来は国として制度化されることを目途として,現在東京都において実施している制度の実状を述べ,その利点や問題点を考察してみることにする。すでに発足以来6年半を経過し,種種の問題点が発見され,そのために思うようにこの制度が進展していないのが実状である。他の県ではそれぞれ実状に応じ,われわれのものとは違った制度(仕組み)をとっているわけで,いかなる方法が最も適当であるかを検討すべきである。そのためにまず東京都の実績を述べるわけであるが,この点に関する活発なご批判やご意見を切に希望するものである。
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