トピックス
塩化ビフェニール中毒症の現状
平山 千里
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1九大第3内科
pp.121
発行日 1970年1月10日
Published Date 1970/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202955
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排泄されにくいカネクロール
昭和43年6月から,西日本地区,すなわち,山口・福岡・長崎県を中心として発生した塩化ビフェニール中毒症(いわゆる油症)は,米ヌカ油の脱臭工程における加熱媒体として使用された塩化ビフェニール製品名カネクロール,DDTに類似した化合物)が,米ぬか油に混入したため,使用した一般市民に中毒症状を起こしたものであり,現在登録された患者数は916人である.油症を従来の塩化ビフェニール中毒症と比べると,多数例であること,経口的中毒症であることなどの特徴をもっている.患者の平均摂取量は800ml程度であり,塩化ビフェニールの平均濃度は2OOO-3000ppmである.米ヌカ油の摂取量と,その重症度(皮膚症状)とはおよそ比例している(倉恒匡徳・吉村健清).
塩化ビフェニールは,脂溶性物質であるため体内では脂肪組織に高濃度に分布しており,死亡患者についての検索では,皮下脂肪のほか,腸間膜・皮膚・肝臓.腎臓・脳・肺などに検出されている(牧角三郎ほか).塩化ビフェニールは体内で代謝されにくいため,尿や胆汁への排泄はほとんど認められず,おそらく皮膚や母乳より微量排泄されているものと考えられている.ただ排泄されているのは主として塩素数の少ない製品であり,塩素数の多い毒性の強い製品は長く体内にとどまる傾向が指摘されている.
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