Japanese
English
特集 痴呆の臨床と鑑別
分裂病と誤られやすい痴呆
Dementia and Schizophrenia
横井 晋
1
Susumu Yokoi
1
1群馬大学医学部神経精神医学教室
1Dept. of Neuro-Psychiatry, Gunma Univ. Medical School
pp.419-423
発行日 1973年4月15日
Published Date 1973/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202014
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I.はじめに
精神分裂病と痴呆を鑑別することは一見きわめて容易なことのように思われる。事実定型的な症状と経過を示す症例では,両者の診断が間違うことはほとんどないといってよい。器質性の痴呆と診断されたものが分裂病に移行することはきわめて稀であるのに反し,現象学的に分裂病様の症状で始まる器質性疾患が,当初分裂病として取り扱われていた苦い経験は,多くの読者が一度や二度は味わっているに違いない。もう1つの問題は,クレペリンによって早発性痴呆といわれたように,分裂病の末期状態のいわゆる精神荒廃状態と器質性痴呆との相違の問題であろう。
上述のいずれを論ずるとしても,まず痴呆をどのように定義づけるかが最初の出発点となる。わたくしは2〜3年来,痴呆とは一体何かと,失語症,アルツハイマー病,ゲルストマン症状群などの患者をみるごとに考えつづけて彷徨っていた。脳機能の局在についての器具論に対する全体論,Scheller, H. の人間学的立場からみた痴呆の概念,Ey, H. の器質力動学からみた意識にもとづく痴呆の解釈など,それぞれに苦心のほどは感じられるものの,終局的にわたくしを満足させてくれるものはなかった。このような迷いをもって呻吟していたときに,たまたま千谷教授の自然哲学的生命観-意識と生命-1)が送られてきた。一読するうちにわたくしは迷いの雲が晴れる思いがしてきたのである。
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