Japanese
English
研究と報告
老年痴呆の言語表出—精神分裂病との比較を中心に
Language Function in Senile Dementia: Comparison with schizophrenia
臼井 宏
1
,
永島 正紀
1
,
池田 マリ
1
,
田代 芳郎
1
,
立壁 典泰
1
,
田辺 義貴
1
,
横川 晴彦
1
,
木戸 幸聖
1
Hiroshi Usui
1
,
Masanori Nagashima
1
,
Mari Ikeda
1
,
Yoshiro Tashiro
1
,
Noriyasu Tachikabe
1
,
Yoshiki Tanabe
1
,
Haruhiko Yokokawa
1
,
Kosei Kido
1
1日本大学医学部精神神経科学教室
1Department of Neuropsychiatry, Nihon University School of Medicine
キーワード:
Senile dementia
,
Schizophrenia
,
Language
,
Speech
,
Verbal hehavior
Keyword:
Senile dementia
,
Schizophrenia
,
Language
,
Speech
,
Verbal hehavior
pp.267-274
発行日 1986年3月15日
Published Date 1986/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204115
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抄録 老年痴呆の言語表出の異常を精神分裂病のそれと対比しながら検討するため,意志の伝達が困難な老年痴呆10例と分裂病10例の面接時の言語応対の一部を抜き書きし,合計20の応答について疾患名をブラインドにし,純粋に言語的要素だけからいずれの疾患患者の応対かを判断するよう精神科医に依頼し,87の回答を得て,その解析を行った。その結果,老年痴呆を分裂病と誤る例がその逆より多かった。文脈の異常,造語,非現実的内容は両疾患にみられ,誤答を招く理由はここにあると推定された。両疾患の正答率の高い例の特徴を整理すると,老年痴呆では指示対象不明の代名詞と「間もたせ語」の多用,意味限定不足,論理的展開の欠如,分裂病では抽象語や意味ありげな語句の使用,偽似論理的展開,話題の急激な変化がある。老年痴呆の言語表出の異常は,意味論的障害,情報の枯渇と,そうした障害があるにもかかわらず,患者が病前と同様の対話の仕方と流暢性の維持を図るために出現し,また意味不明の語は失語とは性質を異にする"でまかせ語"であると考えた。
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