Japanese
English
展望
クレペリンとマイヤー
Kraepelin and Meyer
西丸 四方
1,2
Shiho Nishimaru
1,2
1前信州大学医学部精神医学
2心理困難・心理療法研究所
1Dept. of Psychiatry, Shishu Univ. School of Med.
2Institute for Mental Trouble Research and psychotherapy
pp.828-835
発行日 1970年10月15日
Published Date 1970/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201663
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Ⅰ.学問と実地の矛盾について
近頃は我国の精神医学界も混乱を極め,新しい目標はしばらく立ちそうもなく,国外に目新しいものを求めても何もない様で,精神医学も今のところ行きづまって打開の道もみつからない。「精神医学」の展望を仰せつかって何か面白そうなことはないか探してみたが何もみつけることができない。これは実際何もないのか,私の頭が進歩性を失って物が見えなくなったのかは分からないが,本を読んでも沈滞して何もインスパイアされるところがない。それでこのごろは新しい本を棄てて,古いものを回顧しているのであるが,この様な気持になるのも年のせいかもしれない。外国でもこのごろはそういう気風があるのか,エスキロールやグリージンガーの古い本の複刻版が出て,簡単には手にすることのできない昔の本を容易に見ることができる様になったのはありがたいことであるが,まだグリージンガーをじっくり読もうという所にまでは気持が行っていない。この半年あまり,今から35年も前に読んだヤスパースの初版(1913年)の訳があるなら出してもいいという話に乗って,昔作ったノートを参考に原稿用紙に千枚ばかり清書してみて,精神医学に何の進歩があったのかという疑問に陥った。今から60年も前に出た本が,クルト・シュナイダーの最近版といくらもちがわないどころか,一層新鮮な様にさえ見えるのである。
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